BTSグラミー賞2023の全結果と真相|3部門快挙と受賞を逃した理由
BTSがメンバー全員の兵役履行を経て完全体としての活動を本格化させる中、世界の音楽シーンで今なお語り継がれているのが、2023年2月に開催された「第65回グラミー賞」です。アジアのボーイズグループとして前人未到となる3部門同時ノミネートという大快挙を成し遂げながらも、悲願のゴールドトロフィーにはあと一歩届きませんでした。
米エンターテインメント界最大の栄誉であるグラミー賞において、なぜBTSは受賞を逃すことになったのか。当時の熱狂と議論、そしてメンバーの兵役突入に伴う授賞式欠席の背景にあった真実を、音楽ジャーナリズムの視点から徹底的に紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:第65回グラミー賞(2023年)でBTSは「最優秀ポップ・デュオ/グループ」「最優秀MV」「最優秀アルバム」の3部門にノミネートされる歴史的快挙を達成した。
- 要点2:受賞を逃した背景には、歴史的背景を背負った競合曲の台頭、レコーディング・アカデミーの保守的な投票構造、そして兵役に伴う現地活動の不在が関係している。
- 要点3:韓国語曲でのノミネートや主要部門への関与はアジア音楽の歴史を大きく塗り替え、全員除隊後の完全体によるグラミー再挑戦への強固な足がかりとなった。
【第65回グラミー賞】BTSのノミネート部門と最終結果一覧
2023年2月5日(現地時間)、米ロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで開催された第65回グラミー賞授賞式。BTSはこの大舞台で、K-POP史上初となる3部門へのノミネートを果たし、世界中のメディアから熱い視線を浴びました。ノミネートされた部門と最終的な結果は以下の通りです。
1. 最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞(Best Pop Duo/Group Performance)
ノミネート作:コールドプレイ × BTS『My Universe』
結果:受賞ならず(受賞者:サム・スミス&キム・ペトラス『Unholy』)
2. 最優秀ミュージック・ビデオ賞(Best Music Video)
ノミネート作:BTS『Yet To Come (The Most Beautiful Moment)』
結果:受賞ならず(受賞者:テイラー・スウィフト『All Too Well: The Short Film』)
3. 最優秀アルバム賞(Album of the Year ※主要部門)
ノミネート作:コールドプレイ『Music of the Spheres』(フィーチャリングおよびソングライターとして参加)
結果:受賞ならず(受賞者:ハリー・スタイルズ『Harry's House』)
2021年の『Dynamite』、2022年の『Butter』に続き、3年連続で「ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞」の候補に選ばれただけでなく、全編韓国語歌詞のアンソロジーアルバム収録曲『Yet To Come』で映像部門に食い込み、さらには主要4部門のひとつであるアルバム賞の候補クレジットにも名を連ねました。結果こそ無冠に終わったものの、ポップミュージックの歴史に刻まれた記録の重みは色褪せません。
「なぜ受賞できないのか?」BTSがグラミー賞を逃した決定的な理由
世界中でスタジアムツアーを完売させ、米ビルボードの主要チャートを席巻してきたBTSが、なぜグラミー賞のトロフィーを手にすることができなかったのか。この疑問に対しては、単なる人気の多寡ではなく、米音楽界が抱える特有の力学と当時の環境要因が複雑に絡み合っています。
最大の要因は、対抗馬となった楽曲が持っていた社会的なインパクトと話題性です。「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞」を制したサム・スミスとキム・ペトラスの『Unholy』は、トランスジェンダー女性として史上初のグラミー受賞という歴史的文脈を背負っており、音楽評論家筋からの評価も極めて高いものでした。また、「最優秀ミュージック・ビデオ賞」を争った相手は、現代アメリカ音楽界の絶対的クイーンであるテイラー・スウィフトが自ら監督を務めた10分超の短編映画仕立ての超大作でした。
さらに、主催団体であるレコーディング・アカデミー投票会員(約1万2000人)の保守的な投票傾向も大きな壁となりました。グラミー賞は商業的なヒットやファンの熱量(ストリーミング数や投票数)を直接反映するビルボード・ミュージック・アワードやアメリカン・ミュージック・アワードとは異なり、業界関係者による記名・無記名投票で決まります。伝統的に白人男性や欧米のロック、トラディショナルなポップスを優遇しがちなアカデミーの体質において、アジア発のボーイズグループに対する見えないバイアスが存在したことは、欧米の音楽ジャーナリストたちも指摘しています。
加えて、2022年後半からグループがソロ活動期間に入り、現地での直接的なロビー活動やプロモーション露出が制限されていた点も響きました。グラミーの選考期間中、ロサンゼルスやニューヨークで積極的に投票権を持つアカデミー会員へアピールするキャンペーン(FYCキャンペーン)を展開できなかったことが、接戦を制する最後の一押しを欠く要因となりました。
アルバム賞ノミネートの真相と「My Universe」「Yet To Come」の歴史的価値
2023年のノミネートにおいて特筆すべきは、グラミー賞の主要部門である「年間最優秀アルバム賞」にBTSのメンバーが公式に関与した事実です。
イギリスを代表する世界的ロックバンド・コールドプレイのアルバム『Music of the Spheres』が同賞にノミネートされた際、アルバム収録曲『My Universe』にフィーチャリング参加し、共同制作者として作詞・作曲に名を連ねたRM、SUGA、j-hopeの3名がグラミー公式のノミネート対象者として認定されました。これはグラミー賞が近年改定した「ノミネートアルバムに貢献したソングライターやプロデューサー、フィーチャリングアーティスト全員にノミネート資格を与える」という規定に基づくものです。K-POPアーティストがグラミーの主要4部門に名前を刻んだ瞬間として、業界内に大きな衝撃を与えました。
また、『Yet To Come』が最優秀ミュージック・ビデオ賞にノミネートされたことも並外れた意義を持ちます。過去の『Dynamite』や『Butter』のような全編英語のグローバルポップではなく、自らのルーツである韓国語で歌い上げた楽曲の映像作品が、アメリカの映像作家やクリエイターたちの支持を集めてノミネートを勝ち取った事実は、BTSの表現力が言語の壁を完全に超越していることの動かぬ証拠となりました。
授賞式欠席と兵役|パフォーマンス出演がなかった背景とネットの反応
授賞式当日、レッドカーペットやステージ上にBTSの姿はありませんでした。2021年のソウル特設ステージからのリモート中継、2022年のスパイ映画を彷彿とさせる圧巻の『Butter』単独ステージと、2年連続で授賞式のハイライトを飾ってきた彼らが、なぜ2023年は姿を見せなかったのか。
その背景にあったのは、グループの兵役履行という極めて現実的な事情でした。2022年12月に最年長メンバーのJINが現役入隊を果たし、グループは公式に「チャプター2」と呼ばれる個人活動重視のフェーズへと移行していました。メンバーそれぞれがソロアルバムの制作や軍入隊の準備を進める過密日程の中にあり、グループとして渡米してパフォーマンスを準備することは物理的に困難な状況でした。
当時、世界中のSNSや音楽コミュニティでは様々な議論が巻き起こりました。 「BTSのパフォーマンスがないグラミー賞は物足りない」という純粋なファンの声から、「過去2回、視聴率獲得のために彼らを利用しながらトロフィーを渡さなかったグラミー側に、BTS側が距離を置いたのではないか」という音楽ファンの深読みまで、ネット上は騒然となりました。
しかし結果として、授賞式での過剰な演出に頼らずとも作品単体の力で3部門にノミネートされたという事実は、彼らが単なる「視聴率稼ぎのゲスト」ではなく、正当に評価されるべき「レコーディングアーティスト」として定着したことを証明する契機となりました。
BTSが切り拓いたグラミーの歴史と完全体復帰後の可能性
BTSが歩んできたグラミー賞の歴史は、そのまま「非白人・非英語圏ポップスが欧米音楽の聖域に挑んだ闘争の軌跡」と言い換えることができます。
【BTSとグラミー賞の歩み】
- 2019年(第61回):韓国人歌手として初めてプレゼンターとして登壇。「We will be back(必ず戻ってきます)」と宣言。
- 2020年(第62回):リル・ナズ・Xのステージにコラボレーターとして参加し、韓国人初のパフォーマンスを披露。
- 2021年(第63回):『Dynamite』で韓国人初となる楽曲部門ノミネート。ソウルから単独パフォーマンスを実施。
- 2022年(第64回):『Butter』で2年連続ノミネート。現地会場でスタンディングオベーションを巻き起こす伝説的ステージを披露。
- 2023年(第65回):『My Universe』『Yet To Come』およびコールドプレイのアルバムで史上最多の3部門ノミネート。
兵役を経て全員が復帰を果たした現在、音楽業界が最も注目しているのは「完全体BTSによるグラミー初受賞の瞬間」です。各メンバーが兵役期間前後に発表したソロアルバムを通じて、それぞれが独自の音楽的アイデンティティと批評的成功を収めました。個々がアーティストとして一段と成熟した状態で再び集結するBTSの新作は、かつてない厚みと説得力を持つことになります。
閉鎖的だったレコーディング・アカデミー自体も世代交代と多様化を急速に進めており、グローバルミュージックに対する受容度は年々高まっています。2023年に残した「3部門ノミネート」という布石は、完全体としての次なる挑戦に向けた確かな土台となっています。
【BTSグラミー賞2023】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:BTSは2023年の第65回グラミー賞でトロフィーを獲得できましたか?
A1:結果として受賞には至りませんでした。ノミネートされた3部門のうち、「ポップ・デュオ/グループ」はサム・スミス&キム・ペトラス、「ミュージック・ビデオ」はテイラー・スウィフト、「アルバム」はハリー・スタイルズがそれぞれ受賞しました。
Q2:なぜ2023年の授賞式にメンバーは出席しなかったのですか?
A2:2022年12月に最年長のJINが入隊し、グループとしての活動を一時休止してソロ活動および兵役準備期間に入っていたためです。グループ全員での渡米やパフォーマンスの準備が困難なスケジュールだったことが理由です。
Q3:コールドプレイのアルバムでBTSがノミネートされたのはどういう仕組みですか?
A3:グラミー賞の規定では、ノミネートされたアルバムに参加したフィーチャリングアーティストやソングライターも公式な候補者として認定されます。『My Universe』で作詞・作曲および歌唱に参加したRM、SUGA、j-hopeが公式クレジット対象となりました。
Q4:BTSはこれまでにグラミー賞を受賞したことがありますか?
A4:現時点でグラミー賞の受賞歴はありません。しかし、アジア出身のグループとして3年連続でノミネートされ、計5つのノミネート実績(個人関与含む)を残したこと自体が、欧米ポピュラー音楽史上初の快挙です。
まとめ:数字以上の足跡を残した2023年とこれからのBTS
2023年の第65回グラミー賞は、BTSにとって「受賞を逃した悔しさ」以上に「自らの音楽的影響力が世界の頂点に達していること」を証明したマイルストーンでした。全編英語のヒットチューンに頼ることなく、韓国語の叙情詩『Yet To Come』や世界的ロックバンドとの対等なコラボレーションを通じて、彼らは正攻法でアカデミーの門を叩き続けました。
兵役という大きな節目を乗り越え、再びひとつのグループとして歩みを進める彼らにとって、グラミーのトロフィーはもはや最終ゴールではなく、通過点のひとつに過ぎないのかもしれません。それでもなお、彼らが再びグラミーのレッドカーペットを踏み、ゴールドトロフィーを掲げるその日を、世界の音楽シーンは息を呑んで待っています。 (出典: bts グラミー賞 2023(Yahoo!ニュース))